経費削減よりも先に着手すべき、利益率アップの処方箋

「利益が出ない。まずは経費を削らなければ……」
業績が伸び悩むとき、多くの経営者が真っ先に着手するのが「経費削減」です。コピー用紙の節約から始まり、広告宣伝費のカット、果ては人件費の抑制まで。
しかし、断言します。「削る」ことばかりに執着する経営は、長期的には会社をジリ貧に追い込みます。
なぜなら、経費削減には限界がある一方で、利益率を向上させるアプローチには無限の可能性があるからです。今回は、経営コンサルタントの視点から、経費削減よりも先に着手すべき「利益率アップの処方箋」をお伝えします。
目次
1. なぜ「経費削減」から始めてはいけないのか?
経費削減は、短期的には確かに利益を押し上げます。しかし、そこには大きな罠が潜んでいます。
「縮小均衡」の罠
広告費を削れば新規客が減り、研修費を削れば社員のスキルが落ち、人件費を削れば優秀な人材から辞めていく。これらはすべて、将来の利益を生む「投資」を削っていることに他なりません。
モチベーションの低下
「節約、節約」と締め付けられる現場で、クリエイティブなアイデアは生まれません。組織全体が内向きになり、顧客への価値提供という本来の目的が疎かになってしまいます。
利益の本質は「売上 - 経費」の結果ではなく、「顧客に提供した付加価値の対価」です。 だからこそ、目を向けるべきは「出口(経費)」ではなく「入り口(価値の設計)」なのです。
2. 処方箋その1:勇気を持って「顧客」を選別する
利益率が低い最大の原因は、実は「誰にでも売ろうとしていること」にあります。
すべての顧客の要望に応えようとすると、カスタマイズコストや過剰なサービスが発生し、現場は疲弊します。利益率を上げるためには、以下の視点で顧客をポートフォリオ分析してください。
- A層(優良顧客): 高い付加価値を認めてくれ、適正価格で買ってくれる。
- B層(維持顧客): 定期的な注文はあるが、価格交渉が厳しい。
- C層(不採算顧客): 手間がかかる割に利益が薄く、クレームも多い。
利益率アップの第一歩は、C層への過剰なリソース割きをやめ、A層に集中することです。 「断る勇気」こそが、利益率を高める最強の武器になります。
3. 処方箋その2:「松・竹・梅」の価格戦略を再構築する
多くの企業が、単一の価格設定、あるいは競合に合わせた価格設定で損をしています。人間の心理をついた「プライシング(価格設定)」を見直すだけで、利益率は劇的に変わります。
アンカリング効果の活用
例えば、50万円のサービス(竹)を売りたいなら、あえて100万円の超高付加価値プラン(松)を用意します。すると、50万円が「現実的で質の高い選択肢」に見えてきます。
「安さ」ではなく「納得感」
価格を上げられないのは、商品の価値が「機能」だけで説明されているからです。
- 機能価値: 性能、スピード、安さ(比較されやすい)
- 情緒価値: 安心感、ステータス、ストーリー(比較されにくい)
顧客が「この会社から買う理由」を情緒価値にシフトさせることで、価格競争から脱却できます。
4. 処方箋その3:業務の「止める・減らす・変える」
経費削減ではなく、「オペレーションの付加価値向上」に目を向けます。
- 止める: 慣習で行っているだけの会議、誰も見ていない報告書。
- 減らす: 過剰な品質確認(顧客が求めていないレベルの完璧主義)。
- 変える: 属人的な作業のデジタル化、AI活用。
ここで浮いた時間は、経費として削るのではなく**「付加価値を生むための時間(企画、顧客対応、スキルアップ)」**に転換させます。これが「生産性向上による利益率アップ」の正体です。
5. 処方箋その4:LTV(顧客生涯価値)を最大化させる
新規顧客を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかると言われています(1:5の法則)。利益率が低い会社は、常に新規獲得という「穴の空いたバケツ」に水を注ぎ続けています。
- リピート率を高める仕組みはあるか?
- アップセル(より上位の商品)の提案ができているか?
- クロスセル(関連商品)の動線は引けているか?
一度繋がった顧客との接点を太く長くすることで、広告宣伝費に頼らない高収益体質へと変わっていきます。
まとめ:経営者の仕事は「削ること」ではなく「創ること」
経費を100万円削る努力よりも、利益率を10%改善する仕組みを創る努力の方が、会社に与えるインパクトは遥かに大きいです。
- 不採算な取引を整理し、理想の顧客に集中する。
- 価格決定権を自社で握るための付加価値を創る。
- 効率化で浮いた時間を、さらなる価値創造に投じる。
「もっと利益を出したい」と願うなら、今すぐ通帳のマイナス項目を見るのをやめ、自社が提供している「価値」の再定義から始めてください。
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