借入返済のためだけに働いている感覚──年末年始の酒席で聞いた、ある経営者の本音

借金の返済の為に働いている感覚

年末年始。
少しだけ時間に余裕が生まれ、気が緩むこの時期は、経営者の本音がふと漏れ出やすい。

あるクライアントと酒を酌み交わしていたときのことです。
彼はグラスを置き、少し間を空けてから、こう言いました。

「正直に言うとね……
借入の返済だけのために働いている感覚があるんですよ」

この言葉は、決して特別なものではありません。
私はこれまで、立場も業種も違う多くの経営者から、同じような言葉を聞いてきました。

口に出すか、心の奥に押し込めているかの違いだけで、
同じ感覚を抱えながら経営を続けている人は、実は少なくありません。

「借入返済のために働いている」という感覚は、どこから生まれるのか

まず最初に整理しておきたいのは、
借入そのものが悪なのではない、という点です。

事業を行う以上、借入は
成長のための手段であり、経営判断の一つに過ぎません。

問題は、借入がいつの間にか「目的」にすり替わってしまうことです。

本来、経営とは、

お客様に価値を提供すること
事業を成長させること
社員や家族を守ること
自分自身の人生をより良くすること

こうした目的のために行われるものです。

ところが、日々の業務に追われるうちに、
経営の風景が次のように変わっていきます。

売上を立てる。
返済する。
また売上を立てる。
また返済する。

この繰り返しだけが日常になると、
経営は「創るもの」ではなく、「こなすもの」に変わります。

そしてある日、
「自分は何のために働いているのだろう」
という疑問が、ふと頭をよぎるのです。

数字は回っているのに、心だけが削れていく

この状態にある経営者の多くは、こう言います。

赤字ではない。
倒産寸前でもない。
最低限、会社は回っている。

それなのに、
なぜか心が重い。
気持ちが晴れない。
疲れが抜けない。

理由はとてもシンプルです。

お金の流れを、自分でコントロールしている感覚がないからです。

返済額は最初から決まっていて、
残ったお金で何とかやりくりする。

この状態が続くと、
経営者は無意識のうちに
「働かされている感覚」を持ち始めます。

それが、
「借入返済のためだけに働いている」
という言葉になって表れるのです。

苦しさの正体は借入ではない。「設計」がないことだ

多くの人が勘違いしていますが、
苦しさの原因は借入そのものではありません。

本当の問題は、
返済を前提とした経営の設計が存在しないことです。

売上目標が曖昧なまま。
利益構造も感覚的。
キャッシュフローを把握していない。
「なんとかなる」で回している。

この状態で借入を重ねると、
借入は未来への投資ではなく、
「今を耐えるための延命措置」になります。

これでは、前向きな気持ちを保つのは難しくなります。

真面目な経営者ほど、この罠にハマる

皮肉なことに、
この状態に陥るのは無責任な経営者ではありません。

責任感が強い。
約束を守る。
逃げない。
家族や社員を守ろうとする。

こうした姿勢を持つ人ほど、
無理を重ねてしまいます。

「返済は遅らせてはいけない」
「迷惑はかけられない」

その結果、削られていくのは、
経営者自身の人生の余白です。

私はこの状態を、
静かな経営破綻と呼んでいます。

抜け出す第一歩は、「返済を疑うこと」

誤解してほしくありません。
返済を止めろと言っているわけではありません。

大切なのは、
返済を絶対的なものとして扱わないことです。

返済額は本当に適正なのか。
条件を見直す余地はないのか。
金融機関と交渉できる可能性はないのか。
今の事業構造で返済し続けられる設計になっているのか。

これらを冷静に見直すことこそが、経営です。

我慢することは、経営ではありません。

「頑張る」前に、「設計」を変える

私が支援の現場で最初に行うのは、
気合や根性論ではありません。

売上構造を分解する。
利益が残らない原因を可視化する。
キャッシュフローを整理する。
返済と成長が両立する設計を作り直す。

ここまで来て、初めて、
経営者の表情が変わります。

「これなら、未来を考えてもいいんですね」

経営は、我慢大会ではありません。

「返済のための人生」から抜け出すために

年末年始の酒席で出た、あの一言。
それは弱音ではありません。

健全な危機感です。

もし今、
借入返済が重くのしかかっている。
働いても楽にならない。
未来の話をする気力が湧かない。

そう感じているなら、
それは能力不足でも努力不足でもありません。

経営の設計が、
今のあなたに合っていないだけです。

経営者が、経営者として生きられる状態へ

高山経営改革事務所が目指しているのは、
単なる売上アップではありません。

お金に追われない。
判断を自分で下せる。
未来を描ける。
人生を犠牲にしない。

そんな、
経営者としての正常な状態を取り戻すことです。

借入は、あなたを縛る鎖ではありません。
正しく設計すれば、前に進むための道具になります。

もし今、
「返済のために生きている感覚」があるなら、
それは立て直すべきサインです。

経営は、まだ変えられます。